宮城の日本酒 蔵元紹介
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萩の鶴、日輪田(萩野酒造)
萩野酒造さんといえば、浮かんでくるのは家族の顔。有壁に住む人たち、蔵の横に流れる有馬川、とんぼや虫がいっぱいの田んぼ、山々に囲まれ、風景そのものがお酒になっているような気がします。創業1840年。栗原市金成は、旧奥州街道の宿場町。歴史の香りがする町で酒造りを繋ぐのは、探求心旺盛な佐藤兄弟。蔵元で兄の曜平さんは、蔵のトップセールスマン(笑)彼がなにかをすれば、自然と笑みがこぼれる。杜氏の弟・善之さんは、物静かだが、内に秘めた探求心がすごい。シャキッとした米味、シュワシュワッとガス感を感じる日本酒のクオリティの高さ、今では萩野酒造の代名詞。瓶詰のスピードも普通じゃない。なるべく空気に触れない無垢無傷の状態で超スピードで瓶詰する。だから発酵のガス感ものこり、火入れ酒だとしても、生酒よりもフレッシュな火入れ酒になる。一方で、熟成の強みも。何年かの熟成を越えた時の純米大吟醸の旨さは忘れられない。当店限定「父子二代酒」の生熟酒も、熟成とみずみずしさが感覚に届いてくる感動もの。萩野酒造のお酒は、心に残る。
【蔵 元】 佐藤 曜平 【杜 氏】 佐藤 善之
【文責】 むとう屋 佐藤 華子(華ちゃん)
日高見(平孝酒造)
「酒は一人でできるもんじゃない」日高見蔵元の言葉。目的にひたすら突き進むチカラ。好きな事、夢を描き続けるチカラ、人を巻き込むチカラ、そしてなんかカッコいい。それが日高見だ。日高見の座右の銘〝魚でやるなら日高見だっちゃ〟という言葉がある。石巻で水揚げされる魚介類が描かれているラベルもあるほど、石巻愛がそこにある。歌舞伎からヒントを得た寿司専用酒「弥助」や卵焼きと最高に合う「助六江戸桜」、“だっちゃ”という言葉部分をお洒落に横文字にした「DACCHA」などの愛すべきシリーズ。辛口本醸造は、光る旨さ。相当あなどれない地元人の晩酌酒。醪のある部屋は通称〝宇宙蔵〟(笑)。温度管理がしやすい冷蔵管理。「社長の遊びにとことん付き合うだけ」そう話す小鹿杜氏は、いい感じのポジティブさ、いい感じのひょうきんさ、いい感じの強気の感じ、そして実力派。例えるならフック船長がやってきても、どーんと向かっていくピーターパンのような雰囲気がある。任すところは任せて、「何があってもなんとかなる」と彼は信じて舵をとる。酒造りが大好きな若者が、日高見の杜氏というのも運命だったのかもしれない。
【杜 氏】 奥原 秀樹
【文責】 むとう屋 佐藤 華子(華ちゃん)
鳳陽(内ヶ崎酒造店)
1661年創業。宮城県で最古と言われる内ヶ崎酒造店があるのは、奥州宿場町と呼ばれる富谷市。歴史の礎もすごいが、内ヶ崎酒造店の蔵内を、一言で言うならば『鳳陽のフィールド』だ。とにかく寒い。内外の温度、雪の日特に同じなんじゃないか。窯のまわりの湯気に暖をとりたくなる。酒造りがはじまってしまうと、外に出られないくらい忙しい。今期は週一回の仕込みに変えた。比較がわかりやすいからだと啓さん。曜日で管理できるさは、わかりやすく、工程が楽になる。詰め込みすぎ、休まずにやりすぎる酒造りは、判断力なくなるきっかけだと改善。そして全量を佐瀬式と呼ばれる搾りをしているのが実は驚き。これはすごい人の手がかかる。酒袋に醪をいれ、人の手で重ねていく。醪自身の重さで搾り、途中から上からゆっくり機械で圧力をかけて搾るものが佐瀬式槽搾りと呼ばれ、贅沢きわまりない。啓さんは、「佐瀬式は、一回ごとに酒袋を洗えばいいから、(手間隙であっても)僕らの効率にあっている」と。窯場が近いから、佐瀬式の中も熱湯殺菌。とにかく、作業の間も歩かない、手も足も休めない。フィールドを走っている。啓さんが『いろんな蔵に聞いてみて、色んなやり方聞いても、環境がまったく違うから全部同じにはできない。数字の根拠が蔵でちがうし、感覚の数字の方が大事』と。なにがすごいかって、最古の蔵という場所で、様々な現代の創意工夫もあるが、同じ場所で、同じ造りで、同じかそれ以上の酒質にもってくるすごさというか。啓さんの感覚がそこに持っていく、研ぎ澄まされた五感をこえた感覚を持っていることにえらく興奮させられてしまった。なんだか啓さんの魅力にひっぱられてしまう。社長で醸造責任者でもある内ヶ崎啓さん。まだ若き30代。一度彼に会い、話をすると、なんというかその魅力にはまってしまう。めちゃくちゃきつそうなのに、めちゃくちゃ楽しそうで。ストイックと言ってしまうのは簡単だが、日本酒の未開拓ゾーンをめちゃくちゃ掘り下げて、こだわりは強いが固執はせず、柔軟。とにかく造りながら動きながら休まずに話をしてくれる。なんというか巻き込む力がある。自分の蔵はみんなオリジナルで。同じはなくて。同じ人がやってる場所なんて世界中どこにもなくて。時間をかけて、伝統も守りながら、水面下で創意工夫して答えを探し、自分色に染めていく。それこそオリジナル。啓さんの中で、お酒は5角形の味わい。「香り」「甘み」「苦味」「酸味」「旨味」。鳳陽の味わいの魅力は「余韻」。ごくんとするのが名残惜しいほど余韻がすばらしい。16代続く内ヶ崎家の酒蔵の歴史と守り抜いてきた人たちが息づく酒蔵がここにある。
【杜 氏】 内ヶ崎 啓
【文責】 むとう屋 佐藤 華子(華ちゃん)